監査請求人である、私、古谷悦子は、令和7年3月31日に住民監査請求を行うために、「泉南市職員措置請求書」を泉南市監査委員事務局に提出しました。請求書と一緒に、
「泉南市中学生のいじめ自死事案に対する泉南市教育委員会と泉南市長の対応と調査について」との標題で、これまでの経緯をまとめた200ページ以上の分厚い資料と、
その資料の経緯に書いた情報の出典となる情報公開された文書と、
情報公開の決定を通知した泉南市情報公開決定通知書、及び泉南市情報非公開決定通知書と、
当該事案に関する情報公開の一覧表、「泉南市いじめ自死に関する情報公開一覧」
を提出しました。
松波翔さんの事案について市長が行った調査の報告は、令和6年5月28日に提出されたのですが、この調査で支払われた謝礼等が、令和5年度の決算に計上されているので、なんとか令和6年度中に監査請求を行いたいと考え、急いで提出しました。わかりにくい部分もあるかと思いますので、本日説明させていただきたいと思います。
住民監査請求で調べていただきたいのは、令和4年3月に松波翔さんが自死した事案について、泉南市長と泉南市教育委員会が行った調査です。この事案はまず、翔さんが自殺した、いじめがあったという報道があって、その後令和4年7月21日に泉南市教育委員会が泉南市議会の議員全員協議会において説明を行いました。当初より泉南市教育委員会はいじめ防止対策推進法に基づいて調査を行うと述べていたことから、監査していただきたい調査はいじめ防止対策推進法に基づく調査、ということになります。ここで簡単にいじめ防止対策推進法について説明します。
いじめ防止対策推進法の配布資料を示す
いじめ防止対策推進法の目的と趣旨
1.法の目的と趣旨
いじめ防止対策推進法の目的が定められた第1条には、児童等の尊厳を保持するため、いじめの防止等、ここの、このいじめの防止等とは、一つは、いじめの防止、二つ目はいじめの早期発見、三つ目はいじめへの対処のことです。このいじめの防止等のための対策に関して、基本理念を定め、国及び地方公共団体等の責務を明らかにし、並びにいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針の策定について定めるとともに、いじめの防止等のための対策の基本となる事項を定めることにより、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進することを目的としています。つまり、いじめの防止、早期発見、いじめへの対処について、泉南市長と泉南市教育委員会、学校はどのような対策をするのか、あらかじめ「基本方針」で定めておいて、この基本方針に則って、いじめ対策を総合的、かつ効率的に行うことを目的とした法律です。
2.「いじめ防止基本方針」について
泉南市長と泉南市教育委員会は、「泉南市いじめ防止基本方針」を策定しており、小、中学校も、それぞれ基本方針を策定しています。翔さんがどの学校に通っていたのかは、個人情報にあたるので、当該学校の基本方針の問題点については言及していませんが、泉南市いじめ防止基本方針がいつ策定されたのかを、泉南市議会の答弁や、泉南市教育委員会会議録から関係する箇所を抜粋して、経緯をまとめた分厚い資料、「泉南市中学生のいじめ自死事案に対する泉南市教育委員会と泉南市長の対応と調査について」に記しております。また、いじめ防止対策推進法と照らし合わせて、「泉南市いじめ防止基本」の内容の、法律に基づかない記述や問題点も、経緯をまとめた分厚い資料に記しています。
3.いじめ防止対策推進法に基づく教育委員会の附属機関について
泉南市教育委員会は、このいじめの防止等のために、いじめ防止対策推進法第14条第3項に基づき附属機関を設置しています。それが「泉南市いじめ問題対策委員会」です。附属機関を設置するには、地方自治法第202条の3第1項の規定により「法律もしくはこれに基づく政令または条例の定めるところにより、その担当する事項について調停、審査、審議又は調査等を行う機関」とされており、つまり、附属機関がどのような事務を行うのか、担当する事項とは何なのかを条例で決めときなさいと地方自治法で定められています。泉南市いじめ問題対策委員会は「泉南市いじめ問題対策連絡協議会等条例」において、担当する事項、つまり所掌事務等が定められています。
泉南市いじめ問題対策連絡協議会等条例の資料を示す
条例の第11条以降が、泉南市いじめ問題対策委員会について定められています。
4.いじめ防止対策推進法第28条第1項で規定されているいじめ重大事態の調査について
基本方針を定めて対策をしていても、残念ながらいじめが背景にあると疑われる重大な事態、自殺や傷つけられたり、金銭を取られたり、長期の不登校などの事態になった場合、いじめ重大事態として、当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うことがいじめ防止対策推進法第28条第1項で規定されています。この調査の目的は「当該事態と同種の事態の発生の防止に資するため」です。本来、学校が行ういじめへの対処で、重大事態が発生することを止めなければならなかった。なのにいじめ重大事態が発生したということは、泉南市、教育委員会、学校が定めていた「基本方針」が機能していなかったということですから、いじめ重大事態の調査は、基本方針通りに職員が対処したのか、基本方針のどこに問題があったのかなどの分析が重要になります。いじめ重大事態の調査に関するガイドライン(平成29年3月文部科学省)には、次のように定められています。
いじめ重大事態の調査に関するガイドラインを示す
いじめ重大事態の調査に関するガイドライン11ページをご覧ください。
(分析)
○ 調査においては、法第13条の学校いじめ防止基本方針に基づく対応は適切に行われ
ていたか、学校いじめ対策組織の役割は果たされていたか、学校のいじめ防止プログ
ラムや早期発見・事案対処のマニュアルはどのような内容で、適切に運用され機能し
ていたかなどについて、分析を行うこと。
ガイドラインに示されているように、いじめ防止基本方針に基づく対応は適切に行われていたか、という分析を調査の中でやらなければならないのです。同じくガイドラインの14ページ、調査結果を踏まえた対応をご覧ください。そこには、再発防止、教職員の処分等との項目があり、このように書かれています。
学校の設置者は、調査結果において認定された事実に基づき、いじめの未然防止、早期発見、対処、情報共有等の学校の設置者及び学校の対応について検証し、再発防止策の検討を行うこと
学校の設置者及び学校におけるいじめ事案への対応において、法律や基本方針等に
照らして、重大な過失等が指摘されている場合、教職員に対する聴き取りを行った上
で客観的に事実関係を把握し、教職員の懲戒処分等の要否を検討すること
と書かれています。
繰り返しになりますが、いじめ防止対策推進法の肝、一番重要なのは、いじめの防止、早期発見、対処を総合的、かつ効率的に行うために、地方公共団体、学校設置者、これは教育委員会のことです。教育委員会及び学校が基本方針を定めて、その基本方針に則っていじめに対処するということです。なので、重大事態が起きた場合、重大事態の事実関係を明らかにして、基本方針のどこが機能しなかったのか、また同法で規定されている地方公共団体の責務、教育委員会の責務、学校の責務をそれぞれが果たしていたのかどうかを明らかにして、基本方針を見直す必要があります。また、責務を果たしていない場合、教職員の処分も行わなければなりません。いじめ重大事態が、重大事態となる前、つまり、いじめ事案であった時点での教職員、教育委員会の対応が処分の対象となるということです。
5.いじめ重大事態の調査(法第28条調査)を泉南市教育委員会が行う際の調査組織について
この、いじめ防止対策推進法第28条第1項が規定する調査を、泉南市教育委員会が主体となって行う場合、先に述べた「泉南市いじめ問題対策委員会」が調査組織となります。泉南市いじめ問題対策連絡協議会等条例第12条で泉南市いじめ問題対策委員会の所掌事務が定められており、同条第1号で「いじめの防止等のための調査及び助言に関すること。」同条第2号で「法第28条第1項に規定する重大事態に係る事実関係の調査審議に関すること。」と規定されています。1号は先ほど述べた、いじめの防止、早期発見、いじめへの対処のための調査と助言を行うことが規定され、2号でいじめ重大事態の調査を行うことが規定されています。
当該事案に対する泉南市教育委員会の対応
1.泉南市教育委員会の調査組織となる附属機関「泉南市いじめ問題対策委員会」について
(1)6月8日に開催された泉南市いじめ問題対策委員会はいかなる事務を行っていたのか
では、泉南市教育委員会が自死した中学生の事案に対して、どのように対処したのか、市議会議員に説明するときに使用した令和4年7月21日の議員全員協議会の資料をご覧ください。一応、議員全員協議会の資料は、情報公開された資料をコピーして一緒に監査委員事務局に提出したのですが、探すのが大変だと思うので、経緯をまとめた200ページ余りの文書、「泉南市中学生のいじめ自死事案に対する泉南市教育委員会と泉南市長の対応と調査委について」をご覧ください。90ページ、91ページに議員全員協議会の資料の写真を貼り付けてあります。
議員全員協議会の資料1ページを見ると、6月8日に泉南市いじめ問題対策委員会において、中学生の自死事案が諮られているのがわかります。先ほど説明しましたが、泉南市いじめ問題対策委員会の所掌事務は二つあって、一つはいじめの防止等、つまりいじめの防止、いじめの早期発見、いじめへの対処のための調査及び助言、二つ目はいじめ重大事態の調査です。当該事案はすでに生徒が自殺、教育委員会は当時「死亡事案」と呼称していましたが、すでに亡くなられている事案なので、亡くなられた生徒のいじめ被害を防止したり、早期に発見して深刻な事態にならないようにしたり、いじめに対処していじめを解消することはできません。当該事案を泉南市いじめ問題対策委員会で扱うには、いじめ重大事態の調査つまり2号の所掌事務としてしか扱えないのです。
同じ資料の68ページをご覧ください。泉南市いじめ問題対策委員会を6月8日に開催するための起案決裁文書の写真を貼り付けてあります。起案日が5月30日なので、こちらに貼り付けました。私に情報公開された起案決裁文書には、会議開催の根拠となる法規の名称、条番号、項番号が記載されておりません。記載がないために何を根拠としているのかはわかりませんが、先ほど申し上げたように、当該生徒の事件を泉南市いじめ問題対策委員会で扱うにはいじめ重大事態として扱うしかないのです。6月8日の泉南市いじめ問題対策委員会が、泉南市いじめ問題対策連絡協議会等条例第12条第1号の所掌事務として執行されているのならば、それはいじめ防止対策推進法の趣旨に基づいているとは言えません。同条例、同条、2号の所掌事務として執行されているのならば、教育部長が7月21日に行った議員への説明と齟齬が生じます。
経緯をまとめた文書の91ページをご覧ください。7月21日の議員全員協議会の2ページ目の写真を掲載しています。一番下に「今後の対応」という項目があります。今後の対応の一つ目の白丸には、市教委では、引き続き保護者と連絡を取ることに注力するとともに、保護者との連絡がとれ事実関係が確認でき次第、速やかに適切に法規に基づく重大事態として扱い、公正な調査等の対応をとる方針と書かれています。これは、7月21日に行われた説明です。今後の対応で、事実関係が確認でき次第、法規に基づく重大事態として扱うと述べていると言うことは、7月21日時点では、松波翔さんの事案は、いじめ重大事態として扱われていなかったのです。6月8日のいじめ問題対策委員会開催は、何を根拠に開催されたのか、適切に執行されていたのかをぜひ調べていただきたいと思います。
(2)新たに立ち上げられる泉南市教育委員会の調査組織とは?
経緯をまとめた文書の91ページをご覧ください。同じく、7月21日の議員全員協議会の資料の2ページ目の写真です。最初に「報道の概要(7月12日時点)」という項目があり、次に「学校と泉南市教育委員会の対応」という項目があります。その白丸の3番目には、「3月22日以降、前頁の「事案の経緯」に示したとおり市教委と学校は、「子供の自殺が起きた時の緊急対応の手引き」(文部科学省、資料5に一部抜粋)、国のいじめ防止対策推進法(資料7に一部抜粋)、市のいじめ防止対策連絡協議会等条例、ここでは市の、という言葉をつけていますが、正しい条例名は「泉南市いじめ問題対策連絡協議会等条例」です。(資料8に一部抜粋)など関係法規に基づき、「自殺が疑われる死亡事案」として基本調査を行なってきた。と書かれています。正確な記載ではありませんがここに書かれた、いじめ問題対策連絡協議会等条例とは、今まで述べてきましたように、泉南市いじめ問題対策委員会の所掌事務を定めた条例です。条例を印刷したものを先ほどお配りしました。この条例は、泉南市いじめ問題対策委員会だけでなく、いじめ防止対策推進法の規定に基く組織について定められており、泉南市いじめ問題対策連絡協議会、この協議会は、同法第14条第1項に基づく組織です。泉南市いじめ再調査委員会、これは、同法第30条第2項の調査を行うための組織で、市長の附属機関です。この、3つの組織について定めた条例です。この条例に基づき3月22日以降、基本調査を行なってきたと言うことは、3つの組織のうちの教育委員会の付属機関である泉南市いじめ問題対策委員会が調査組織として、基本調査を行なったと考えられますが、資料の2ページにはどこにも「泉南市いじめ問題対策委員会」と明記されていません。
それはなぜかというと、2ページ目には違法な調査についての記述があるので、調査組織を「泉南市いじめ問題対策委員会」と明記することができないのです。今から、一つ一つ説明します。では、議員全員協議会の資料などの、公文書上の「翔さんの調査を行う調査組織」の記載箇所を見てみましょう。議員全員協議会2ページには2箇所、調査組織についての記載があります。「学校と泉南市教育委員会の対応」の、白丸5番目と6番目です。白丸5番目には、「市教委では、本件死亡事案の背景やいじめの有無等について、その調査については、法規に基づいた公平中立な第三者委員会に委ねたいと考えている。」と書かれています。
そして次の白丸、6番目には、「当該生徒の死亡後、市教委と学校は、いじめ防止対策推進法に基づき、第三者委員会を立ち上げるなどして調査を行いたい旨を保護者に伝えた」と書かれています。泉南市は、条例を制定して、いじめ防止対策推進法関連の附属機関をすでに設置しているにもかかわらず、立ち上げると述べている。
そして、同じ議員全員協議会の資料4ページには泉南市教育委員会からご遺族に宛てた手紙7月11日に投函した手紙が掲載されています。お手元の経緯を書いた分厚い資料、これの88ページに手紙の内容を引用しているのでご覧ください。手紙には、
泉南市教育委員会事務局指導課の岩崎と申します。
このたび泉南市教育委員会事務局では、第三者委員による調査を行うため、早期に第三者委員会を立ち上げたいと考えております。
つきましては、事実関係の確認と第三者委員会の委員の選定に関しまして(黒塗り)から直接御意見を賜りたいと考えております。
と書かれています。
同じ資料つまり議員全員協議会資料の1ページ目には「泉南市いじめ問題対策委員会」と附属機関名を明記しているのに、2ページ以降は、「法規に基づいた公平中立な第三者委員会」、「第三者委員会を立ち上げるなどして」、「第三者委員会を立ち上げたい」と記述されていて、「泉南市いじめ問題対策委員会」で調査をすると述べていないのです。しかも、第三者委員会を立ち上げたい、と述べています。委員の選定の意見も賜りたいと述べていることから、泉南市いじめ問題対策委員会とは別の調査組織であると考えられます。泉南市教育委員会は、いじめ重大事態が起こった時には、速やかに調査できるように、附属機関として泉南市いじめ問題対策委員会をすでに設置しているにもかかわらず、第三者委員会を立ち上げたいと述べています。
(3)既設の附属機関である「泉南市いじめ問題対策委員会」をも立ち上げる
この議員全員協議会の資料以外にも、教育委員に当該事案を説明した記録があります。令和4年7月25日に開催された泉南市教育委員会定例会、令和4年第7回会議録です。経緯を書いた分厚い資料の97ページから、教育委員会会議録より引用したものを載せています。97ページの青字にしている部分をご覧ください。教育委員会会議では、当時指導課長だった岩崎氏(当時)が、「すでに設置しております泉南市いじめ問題対策委員会において重大事態にかかる事実関係の調査審議を行う際の」と述べています。ここで指導課長は泉南市いじめ問題対策委員会はすでに設置してあると述べている。しかし、同資料101ページの青字部分をご覧ください。同じ会議の中で、岡田教育部長(当時)は、
「泉南市いじめ問題対策連絡協議会等条例第12条第2号による泉南市いじめ問題対策委員会を立ち上げ、その公正な調査の上、事実の確認をしていただけるように準備を進めてまいりたい」
と述べています。
他にも当時の教育部長だった岡田氏の「泉南市いじめ問題対策委員会を立ち上げる」という発言があります。議員全員協議会は、正式な会議録が残りません。動画からの私の書き起こしになりますが、経緯を書いた分厚い資料、129ページに、8月19日に開催された泉南市いじめ問題対策委員会について言及した、岡田氏の8月24日の議員全員協議会答弁を載せています。そこでは、岡田氏は
「いじめ問題対策委員会の件で、誤解を招かんように言いますと、私どものいじめ問題対策委員会、一つの名前で常設の委員会と、それからまだ設置してませんが第三者委員会、同じ名前で設置できる形になってございます。今回、19日に開催したのは、いじめ問題のその常設の委員会の方でご相談をしたりしたという形でございます。したがって、教育委員会では第三者委員会はまだ立ち上げていないというところでございます。」
と述べています。
(4)翔さんの事案に対して2つの調査を行うために2つの調査組織を設ける
ここで少し整理します。7月21日の議員全員協議会の資料の1ページでは「泉南市いじめ問題対策委員会」と明記して、6月8日に翔さんの事案を泉南市いじめ問題対策委員会」で諮ったことが書かれている。いじめの防止、早期発見、対処のためにすでに亡くなった翔さんの事案を泉南市いじめ問題対策委員会に諮ることはできないので、いじめ重大事態の調査のために諮ったと考えられるが、7月21日の議員全員協議会資料2ページ目には、7月21日時点では、翔さんの事案をいじめ重大事態として扱っていないことが書かれている。
教育委員会がいじめ防止対策推進法に則って翔さんの事案を調査するには、つまり調査の主体を教育委員会とするならば、いじめ重大事態として調査しなければなりません。そしてその調査組織は、教育委員会の附属機関として設置された「泉南市いじめ問題対策委員会」となるはずなのです。しかし、7月21日の議員全員協議会の資料2ページには、
・法規に基づいた第三者委員会に委ねたい
・いじめ防止対策推進法に基づき第三者委員会を立ち上げるなどして調査を行いたいと説明し、
と書かれており、同じく議員全員協議会資料4ページには、
・ご遺族の手紙においては、第三者委員会を立ち上げたい、委員の選定に関して意見を賜りたい
と書かれていて、調査組織を泉南市いじめ問題対策委員会と明示しないばかりか、泉南市いじめ問題対策委員会以外に第三者委員会を立ち上げるかのように書かれています。
そして、「泉南市いじめ問題対策委員会」と述べて、附属機関名を明示した説明においても、所掌事務ごとに別の「泉南市いじめ問題対策委員会」が存在していて、いじめ重大事態の調査は、泉南市いじめ問題対策委員会を新たに立ち上げなければならないというような虚偽の説明を行っています。
どうしてこのような嘘を交えた説明を行っているのでしょうか?
既設の附属機関と、新たに立ち上げる第三者委員会の2つの調査組織を設けるということは、翔さんの事案に対して、2つの調査を行うと考えられます。泉南市教育委員会は、翔さんの事案に対する調査を複数行うために事案の判断を変えて、調査を二重に行っています。ここまで、調査組織について説明してきましたが、ここからは、翔さんの事案に対して、泉南市教育委員会がどのように事案の判断を変えて調査を二重に行っているのかを説明します。
2.自殺の調査の指針といじめ重大事態の調査のガイドラインについて
翔さんの事案に対する調査の実施の仕方、手順等が書かれた2つの文書があります。一つは「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針改訂版」です。こちらは自殺の調査のことが書かれています。そしてもう一つは「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」です。こちらはいじめの重大事態の調査のことが書かれています。
子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)を示す。
先ほど配布しました、子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)をご覧ください。改訂版とありますが、これは、いじめ防止対策推進法が施行される前に策定された指針で、いじめ防止対策推進法施行後、自殺の背景にいじめの疑いがある事案については、法の規定により、いじめ重大事態の調査として、義務規定となったため、自殺の調査の指針が改訂されたという経緯があります。子供の自殺が起きたときの背景調査の指針改訂版の1ページの、改訂版作成の趣旨、の二つ目の段落に書かれています。
当該箇所を読み上げます。
また、平成25年6月には、「いじめ防止対策推進法」が成立しました。これまでも、児童生徒の自殺が起こった場合には、その背景にいじめが疑われるか否かに関わらず、背景調査の実施が求められていたところですが、平成25年9月28日の法律の施行以降、児童生徒の自殺が、いじめにより生じた疑いがある場合は、いじめ防止対策推進法に規定する「重大事態」として、事実関係の調査など、必要な措置が法律上義務付けられることとなりました。
つまり、この自殺の調査は、自殺の原因と考えられるものに、いじめがあってもなくても、文科省が教育委員会と学校に対して実施することを求めていた調査でしたが、いじめ防止対策推進法が施行されてからは、この自殺の調査のうち、いじめが背景にあると疑われる事案に対しての調査は、法律で義務規定となりました。
この指針で定めた自殺の調査は、基本調査というものと、詳細調査というものの二つの調査があります。この指針の13ページには、いじめ防止対策推進法との関係という見出しの箇所に、いじめが背景に疑われる場合は、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態としての対処が法律上義務付けられており、当該指針の基本調査、及び、詳細調査は、いじめ防止対策推進法第28条に基づく重大事態の調査に当たる、と書かれています。
いじめ重大事態の調査に関するガイドラインを示す
では、次に先ほど配布しました、いじめの重大事態の調査に関するガイドラインをご覧ください。11ページの下から8行目には、
(2)いじめが背景にあると疑われる自殺・自殺未遂である場合
子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)(平成26年7月文部科学省。以下「背景調査の指針」という)に沿って行うこと
と書かれています。
つまり、自殺の調査の指針と重大事態の調査のガイドラインと、調査についての文書は二つありますが、翔さんの事案に対しては、子供の自殺が起きたときの背景調査の指針に沿って調査を行い、その調査はいじめ重大事態の調査、つまりいじめ防止対策推進法で義務付けられた調査に該当するということです。
仮に、子供の自殺事案が他にも発生して、それがいじめによるものではなく、例えば病気を苦にしてとか、家庭で虐待が疑われているとか、いじめ以外の背景のある自殺事案であれば、その事案に対して行う調査はいじめ防止対策推進法で義務付けられた調査ではありません。いじめ重大事態以外の自殺の調査、ということになります。このように、学校と教育委員会が、どのような背景のある自殺事案と判断するのかで、実施する調査が異なります。法で義務付けられたいじめ重大事態の調査として行うのか、いじめ以外の背景のある自殺の調査として行うのかは、事案をどのように判断するかで決まります。
自殺の調査といじめ重大事態の調査との関係は、経緯を書いた分厚い資料の39ページで説明しています。39ページには、いじめ重大事態に該当する事案を図にしたものを載せています。
この図の青色の丸の中に入る事案が生命に重大な被害が生じた事案で、その背景にいじめの疑いがあると認められる事案は黄色の丸の中に入っている事案です。翔さんの事案は、青色と黄色の円が重なった中にあります。先ほど述べた、病気を苦にしての自殺事案、背景に虐待がある自殺事案などは、いじめ以外の背景のある事案なので、青い円の中にありますが、黄色の円の外側にあって、いじめ重大事態には該当しない事案と判断されます。
3.死亡事案といじめ事案と自死事案について
泉南市教育委員会は、翔さんの事案に対する「判断」を変えることで、附属機関である泉南市いじめ問題対策委員会では「いじめ重大事態の調査」あるいは、「いじめ事案に係る重大事態」の調査を行い、その一方で表向きは、第三者委員会を立ち上げるとして、委員の選定を行い、翔さんの事案をいじめ以外の背景がある事案と判断して、いじめ以外の背景のある自殺の調査を、新しく立ち上げる第三者委員会で行おうとしていたのだと思います。時間の制約があるので、ここからは簡単な説明になってしまいますが、詳しくは、経緯を書いたこの分厚い「泉南市中学生のいじめ自死事案に対する泉南市教育委員会と泉南市長の対応と調査について」の41ページ以降をご覧ください。
(1)死亡事案の調査
端折っての説明になりますが、
泉南市教育委員会は、翔さんの事案の判断を死亡事案、いじめ事案、自死事案と変えることで、それぞれの事案ごとに調査を行っています。子供の自殺が起きたときの背景調査の指針改訂版の1ページをご覧ください。「改訂版作成の趣旨」には、「児童生徒の自殺が、いじめにより生じた疑いがある場合は、いじめ防止対策推進法に規定する「重大事態」として、事実関係の調査など、必要な措置が法律上義務付けられることになりました」と記載されています。泉南市教育委員会は、これを利用して、ご遺族と連絡が取れず、死因が確認できないとして、翔さんの事案を「自殺が疑われる死亡事案」としました。つまり、死因が確認できず、自殺かどうかわからないので、いじめ重大事態として対処できない、という理屈です。中学校は、翔さんの事案を自殺が疑われる死亡事案として子供の自殺が起きたときの背景調査の指針改訂版にある、基本調査を行いました。
(2)いじめの有無の事実確認を行い、いじめ重大事態以外の自死事案と判断
そしてご遺族代理人に死因の確認を行ったとされる8月3日までの間、つまりいじめ重大事態に該当する事案と判断することができるようになるまでの間の6月8日に、いじめの有無の事実確認の調査を泉南市いじめ問題対策委員会で行いました。このいじめの有無の事実確認により、事案の判断を死亡事案から、いじめが背景にない自死事案に変えたと思われます。
いじめ重大事態と判断する前に、組織を設けての調査(泉南市いじめ問題対策委員会での調査)を行うのは、いじめ防止対策推進法の趣旨に反します。7月21日の議員全員協議会の資料2ページ以降、泉南市いじめ問題対策委員会と附属機関の名称を明示せずに第三者委員会と記載していたのは、2ページの「学校と泉南市教育委員会の対応」の、白丸5番目に、「市教委では、本件死亡事案の背景やいじめの有無等について、その調査については、法規に基づいた公平中立な第三者委員会に委ねたいと考えている。」との記載内容が違法だからです。自殺事案ではなく、死亡事案と述べているのですから、この調査はいじめ重大事態の調査ではありません。いじめ重大事態の調査の前に泉南市いじめ問題対策委員会でいじめの有無について調査することは違法だから、「泉南市いじめ問題対策委員会」と明示せずに、第三者委員会と記述しているのです。
分厚い資料の37ページに記述しましたが、4月22日に学校から市教委へ提出された基本調査(案)について泉南市教育委員会教育長宛に令和5年5月23日付けで情報公開請求を行ったところ、いじめ防止対策推進法、あるいは同法で規定されている「泉南市いじめ防止基本方針」に基づく基本調査(案)は文書不存在でしたが、その一方で、子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)に基づく基本調査(案)は一部公開されました。先ほど説明しましたように、子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)には当該指針の「基本調査」及び「詳細調査」は、いじめ防止対策推進法第28条に基づく重大事態の調査に当たると明記されています。情報公開において、子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)に基づく「基本調査(案)」が存在するのに、いじめ防止対策推進法に基づく「基本調査(案)」が不存在ということは、当該事案は情報公開請求時の令和5年5月23日時点において、いじめ重大事態として扱われていないということです。また、いじめ防止対策推進法第30条第1項に基づく、当該学校から市長へのいじめ重大事態の発生の報告の文書も不存在であったことから、翔さんの事案は、いじめ重大事態として扱われていません。
(3)いじめ以外の背景のある「自死事案の調査」
ご遺族の要望により、翔さんの調査は、表面上、市長が行うことになりました。泉南市長は、翔さんの事案をいじめ以外の背景のある自死事案と判断して、附属機関「泉南市いじめ再調査委員会」で調査することができるように泉南市いじめ問題対策連絡協議会等条例第20条の泉南市いじめ再調査委員会の所掌事務を改正しています。改正しなければ、泉南市いじめ再調査委員会では、いじめに関係しない事案を扱うことができないからです。詳しくは、経緯をまとめた分厚い資料の146ページをご覧ください。
市長の行った調査はいじめ重大事態の調査ではないので、先に説明した、いじめ重大事態の調査に関するガイドライン11ページに記載された分析が行われておらず、報告書には分析結果が記載されていません。(分析)
○ 調査においては、法第13条の学校いじめ防止基本方針に基づく対応は適切に行われ
ていたか、学校いじめ対策組織の役割は果たされていたか、学校のいじめ防止プログ
ラムや早期発見・事案対処のマニュアルはどのような内容で、適切に運用され機能し
ていたかなどについて、分析を行うこと。
令和6年5月28日に市長に提出された「泉南市中学生自死の重大事態の調査に係る報告書」の目次を先ほどお配りしました。分析が行われていないのが確認できます。
また、市長の調査の報告書には、泉南市いじめ問題対策委員会において、教育委員会が何を調査していたのか、全く記載がありません。市長の諮問書(令和5年1月27日付け泉南総第17号)においては、(4)生徒の自死した後における関係者の対応状況を明らかにするとともに、その対応が適切であったか考察することが諮問されているにもかかわらず、泉南市教育委員会が翔さんの事案を泉南市いじめ問題対策委員会に諮っていたことは考察されていません。
市長の諮問書は、分厚い資料の201ページに載せています。
では、市長の調査では行われることのなかった分析、
○ 調査においては、法第13条の学校いじめ防止基本方針に基づく対応は適切に行われ
ていたか、学校いじめ対策組織の役割は果たされていたか、学校のいじめ防止プログ
ラムや早期発見・事案対処のマニュアルはどのような内容で、適切に運用され機能し
ていたかなどについて、分析を行うこと。
この分析はどこで行われているのでしょうか。私は教育委員会の附属機関、泉南市いじめ問題対策委員会で行われたと考えています。
(4)「いじめ事案に係る重大事態」の調査
令和4年8月1日に、泉南市教育委員会会議の臨時会が開催され、報告第2号として、「泉南市立学校におけるいじめ事案に係る重大事態について」が報告されています。私は、この報告は松波翔さんの事案の報告だったと考えています。8月2日、翔さんとお兄さんのいじめ被害について記載された子どもの権利条例委員会の第10次報告を市長が受け取りました。8月3日には、翔さんの死因が自殺であるということを泉南市教育委員会は、ご遺族代理人に確認しました。市長が報告を受けとる前に、死因が確認される前に、翔さんの自死の背景にいじめがなかったことを教育委員に報告する必要があったのではないかと考えています。8月1日の教育委員会会議臨時会で報告された「いじめ事案に係る重大事態」が翔さんの事案であることを立証するために、令和5年7月25日に情報公開請求を行い、その後審査請求を行ったことを、分厚い資料の122ページに記載しています。
泉南市教育委員会は、令和4年8月1日に開催された泉南市教育委員会会議令和4年第1回臨時会で報告された事案が、松波翔さんの事案とは別の事案に見せかけるために、法第30条第1項、第28条第1項の文書には該当しない文書を私に公開しています。当該情報公開請求は、令和5年7月25日に請求しました。ほぼ1年後、審査請求を受けての裁決が行われましたが、臨時会で報告されたいじめ事案に係る重大事態の法第28条第1項の文書についてはあらためて処分を行うということで、令和6年8月20日付け泉南教委指導第868号泉南市情報公開決定通知書で、再度、公開決定が通知され、先ほどお配りした、諮問書を含む710ページ分の文書が公開されました。
先ほどお配りした泉南教委指第708号、令和5年5月11日付けの諮問書をご覧ください。文書の標題は「いじめ防止対策推進法第28条第1項に基づく調査の実施について(諮問)」の文書です。この文書は、冒頭、泉南市いじめ問題対策連絡協議会等条例第12条第2項に基づき、との記載がありますが、泉南市いじめ問題対策連絡協議会等条例第12条に第2項は存在しません。そして諮問書に添付された資料が一人分とは思えないほど多いこと、諮問の前に、学校に資料を提出するように教育委員会が依頼をして、その資料について諮問していると思われることなどから、この諮問はいじめ重大事態の調査ではなく、当該学校のいじめ事案について諮問したものだと考えています。
記の下の、諮問事項をご覧ください。
1 黒塗り学校におけるいじめに関する事実の有無
2 当該学校が行った調査内容の検証及び調査結果の評価
3 当該被害生徒への支援体制の検証
4 当該関係生徒に対する黒塗り学校及び泉南市教育委員会の対応についての検証
5 同種の事態の再発防止のために黒塗り学校及び泉南市教育員会が執るべき措置等の検討
これは、いじめの重大事態の調査に関するガイドラインの14ページ、調査結果を踏まえた対応の再発防止、教職員の処分等に該当する内容です。ガイドラインには、
学校の設置者は、調査結果において認定された事実に基づき、いじめの未然防止、早期発見、対処、情報共有等の学校の設置者及び学校の対応について検証し、再発防止策の検討を行うこと
学校の設置者及び学校におけるいじめ事案への対応において、法律や基本方針等に照らして、重大な過失等が指摘されている場合、教職員に対する聴き取りを行った上で客観的に事実関係を把握し、教職員の懲戒処分等の要否を検討すること
と書かれています。二つ目の丸の箇所に学校の設置者及び学校におけるいじめ事案への対応において、と書かれていますが、これは先ほども説明しましたように、いじめ重大事態が、いじめ事案であった時の対応です。これはいじめ重大事態の調査結果を踏まえた対応なのです。
翔さんの事案に対する市長の調査では、法第13条の学校いじめ防止基本方針に基づく対応は適切に行われていたか、などの分析が行われませんでした。翔さんの事案をいじめ重大事態として扱わなかったために、基本方針に照らしての職員の対応の分析ができませんでした。市長の調査の陰で、泉南市教育委員会の附属機関、泉南市いじめ問題対策委員会において、翔さんの事案をいじめ事案に係る重大事態と称して、ご遺族や市民の知らないうちに分析や検証が行われていたのではないかと考えています。
そして、泉南市いじめ問題対策委員会での分析、検証が終わったのちに、内省作業と称して、ご遺族代理人を呼び出し、ご遺族に説明したという証拠の録音でもしているのだろうか、と思っています。
令和4年6月8日の泉南市いじめ問題対策委員会開催の起案決裁文書には、いかなる法規に基づき開催されるのか、明記されていませんでした。泉南市の起案決裁文書には、根拠となる法規の条番号、項番号を明記しないのが、常態化しているのではないかと考えています。もともと令和4年に翔さんの事案についていじめ重大事態の調査の諮問を行なっているのか、それとも令和5年5月11日に、いじめ事案の一つとして、他の事案に紛れ込ませて諮問しているのか、私にはわかりませんが、どちらか一方について追求されたら、起案決裁文書に、明記していなかった根拠となる法規の条番号、項番号を後から書き足しているのではないか?とも考えています。
求める必要な措置
松波翔さんの事案の調査に関わった市長、教育長及び職員で、調査のために支払われた泉南市いじめ問題対策委員会の委員と泉南市いじめ再調査委員会の委員への謝礼等の費用を弁済、弁償?適当な言葉がわかりませんが、調査に使われた税金を市長と教育長と職員で、泉南市の会計にお金を返して、あらためて法に基づいた調査を行うことを請求します。松波翔さんは、亡くなってもなお、事案の判断を変えて、複数の調査が行われ、尊厳を踏み躙られました。
泉南市いじめ問題対策連絡協議会等条例では、教育委員会の附属機関では、いじめ以外の背景のある自殺の調査ができないのに、市長の附属機関では、いじめ以外の背景のある自殺の調査ができるようになっていて、調査を二重に行えるような隠蔽する仕組みがそのまま残っています。
また、泉南市いじめ防止基本方針も、市長が調査を行う場合、先に学校で調査すると定められており、翔さんの事案のように、中学校で調査を行なっているように見せかけ、附属機関でこっそり調査を行うということが行われる可能性があります。きちんと翔さんの事案をいじめ重大事態として調査をやり直し、翔さんの尊厳回復を行い、またこれからの児童生徒のためにも、再発防止の措置を行うことを求めます。
陳述原稿ここまで
地方自治法第242条第7項に基づく、証拠の提出
陳述当日に監査委員に配布した資料
証拠1 いじめ防止対策推進法
証拠5 令和6年5月28日付け 泉南市中学生自死の重大事態の調査に係る報告書」目次
証拠6 泉南教委指第708号、令和5年5月11日付けの諮問書