目次
経緯1 泉南市(大阪府)いじめ防止基本方針の基となる大阪府のいじめ防止指針
2014.3.7 教育長答弁
いじめ防止基本方針
法に反している平成26年3月策定の泉南市いじめ防止基本方針
泉南市(大阪府)いじめ防止基本方針の基となる大阪府のいじめ防止指針
大阪府のいじめ防止指針のいじめの定義
大阪府のいじめ防止指針の2つの教訓化
2022年(令和4年)3月に起きた泉南市の中学生、松波翔さんのいじめ自死事件に、泉南市教育部(事務局を含む泉南市教育委員会、及び泉南市立小中学校をいう。以下同じ。)と泉南市(泉南市長部局をいう。以下同じ。)がどのように対処し、調査を行ったのかかをまとめています。当該事件の背景にいじめがあることは、令和4年8月2日に泉南市長が受け取った子どもの権利条例委員会の第10次報告書で指摘されており、子どもの権利条例委員会は、同年6月7日に教育長に宛てた意見表明の書面においても、いじめ防止対策推進法に基づく対処が必要かつ不可欠であると表明しています。また、メディアによる報道でもご遺族は、いじめがあったことを話していらっしゃいます。本文書も、泉南市教育部と泉南市がいじめ防止対策推進法に則った対処、および調査を行ったのかどうかを検証するために経緯をまとめました。
いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号 以下、法という)第1条には、同法の目的が示されています。
第一条 この法律は、いじめが、いじめを受けた児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであることに鑑み、児童等の尊厳を保持するため、いじめの防止等(いじめの防止、いじめの早期発見及びいじめへの対処をいう。以下同じ。)のための対策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体等の責務を明らかにし、並びにいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針の策定について定めるとともに、いじめの防止等のための対策の基本となる事項を定めることにより、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進することを目的とする。
法は、2011年10月の大津市のいじめ自死事件が立法事実となっており、児童生徒の尊厳を保持するため、とりわけいじめの被害児童生徒の生命又は身体に重大な危険を生じさせないために、
以下の4つを定めることにより、
いじめの防止等(いじめの防止、いじめの早期発見及びいじめへの対処)のための対策を推進することを目的としています。
- いじめの防止等のための対策に関し、基本理念を定める。
- いじめの防止等のための対策に関し、国及び地方公共団体等の責務を明らかにする
- いじめの防止等のための対策に関する基本的な方針の策定について定める
- いじめの防止等のための対策の基本となる事項を定める
いじめ防止対策推進法というと、重大事態の調査が注目されがちですが、法はいじめが「重大事態」に進む(悪化する)ことがないようにするために定められたものであり、重大事態の調査は法が定めるいじめの防止等(いじめの防止、いじめの早期発見、いじめへの対処)のための対策のどこが機能していなかったのかを調べるという意味を持ちます。
「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(平成29年3月)にも「調査においては、法第13条の学校いじめ防止基本方針に基づく対応は適切に行われていたか、学校いじめ対策組織の役割は果たされていたか、学校のいじめ防止プログラムや早期発見・事案対処のマニュアルはどのような内容で、適切に運用され機能していたかなどについて、分析を行うこと」との記述があります。しかし、泉南市の場合(大阪府も同様)、地方いじめ防止基本方針である「泉南市いじめ防止基本方針」と「学校いじめ防止基本方針」の記載内容が、法に基づいたものではありません。
翔さんが通っていた中学校の学校いじめ防止基本方針(2023年4月時点)には、「本基本方針は、いじめを重大な人権侵害事象と捉え」「いじめは心身に深刻な被害をもたらし重大な人権侵害であるとの認識のもと」との記載があるだけで、いじめの定義を明らかにしていません。当該中学校のいじめ防止基本方針は、法のようにいじめを「行為」と定義して定められたものではなく、「事象」と捉えて定めたものなのです。
泉南市いじめ防止基本方針に至っては、「市いじめ防止基本方針(注:泉南市いじめ防止基本方針を指す)は、(中略)いじめ防止のための総合的な方針です。」と述べていて、法が定める「いじめの防止、いじめの早期発見及びいじめへの対処のための対策に関する方針」ではなく、いじめ防止のために限った方針となっています。たとえ基本方針にのっとった対応をしたとしても、その基本方針が法に反したものであれば、その対応は法律に反していると考えられます。
では、いじめを事象と捉えた方針と、いじめ防止のための方針は、法が定めるいじめの防止等のための基本的な方針とはどのように違うのでしょうか。泉南市いじめ防止基本方針と、当該中学校のいじめ防止基本方針の基となった大阪府の「いじめ防止指針」を解読すると、法との違いがわかります。